提言・論考
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韓国の経済安全保障と新たな日韓経済協力
～サプライチェーンと経済関係緊密化～

奥田 聡

はじめに

朝鮮戦争で国土が荒廃した韓国がその後「漢江の奇跡」と呼ばれる急速な経済発展を遂げたことはよく知られている。その過程で大きな役割を果たしたのが輸出主導による経済発展戦略であった。これを可能にしたのは戦後のGATT体制下での自由貿易的な雰囲気であった。韓国は1996年にOECDへの加盟を果たし先進国の隊列に加わったが、その後のアジア通貨危機やリーマンショックといった大きな経済変動から韓国を救ったのも輸出であり、WTO秩序下での自由貿易体制であった。

しかし、2010年代後半に米中対立が激化すると世界の自由貿易的雰囲気は後退した。2018年にトランプが米大統領に就任し、TPP脱退や対中報復関税など自由貿易体制に逆行する措置を次々と繰り出した。その後米国は「経済安全保障」を唱え同盟国を巻き込んだ事実上の経済ブロックの形成にいそしんでいるように見える。

中国との緊密な経済関係を持ってきた韓国にとって、米中対立の激化とブロック化の進行そして自由貿易的雰囲気の退潮は好ましからざる状況と言わざるを得ない。しかし、安全保障面での対米依存を考慮し韓国は米国ブロックの一員として同国の安全保障戦略に協力する姿勢を次第に鮮明にしている。このために韓国はサプライチェーンの強靭化や技術優位性の確保を急いでいる。

だがこうした状況は日本にとっても同様である。米中対立激化に起因する最近の変化は共に米国ブロックに属する日韓が新たな経済協力を行う新たな誘因を提供している。そして、2022年に日本との関係改善を掲げる尹錫悦が韓国大統領に就任したことが新たな日韓経済協力の追い風となっている。

本稿では、韓国における経済安全保障政策を概観するとともに、日韓が経済安全保障へ傾斜する中での日韓経済協力の意義、あり得べき新たな日韓経済協力の具体例の提示、そして今後の課題を検討してみたい。

１．韓国の経済安全保障政策 文在寅政権下でのサプライチェーン危機と対策

韓国は古くからグローバルサプライチェーンを活用しながら輸出品を効率的に生産し、輸出主導型の経済発展を図ってきた。それゆえ、サプライチェーンに問題が生じると深刻な事態になりがちである。サプライチェーン危機の古い例としては2011年の東日本大震災の際に日本からの中間財輸入ができなくなり、韓国での生産に支障が出た例がある。

文在寅政権下においてもいくつかのサプライチェーン危機の事例を挙げることができる。まず挙げられるのが2019年7月の日本による韓国向け半導体部材の輸出管理強化である。この事例は経済外的な理由での供給途絶リスクを韓国に認識させるものとなった1。また、2020年2月にはコロナ禍に伴って中国産の自動車用ワイヤハーネスの輸入が途絶したが迂回調達が間に合わず、韓国自動車メーカーの生産ラインが停止する事態が生じた。労働集約的な中間財の生産工程を海外移転したことが裏目に出たケースであった。2021年11月には中国が尿素の輸出を規制したことにより、韓国でのディーゼルトラックの運行に必須となる尿素水の需給が逼迫し、一部ではトラックの運行が停止する事態となった(尿素水大乱)。

これらのサプライチェーン危機に対し、文在寅政権は様々な対応策を打ち出してきた。日本による半導体部材の対韓輸出管理強化については、2019年8月に「素部装2競争力強化対策」(素部装対策1.0)が発表された。これは対日輸入に頼る中間財100品目の国産代替を図るもので、サプライチェーン対策と韓国の輸出品の競争力向上の両方を狙うものであった。中国産ワイヤハーネスの欠品に対しては、2020年7月に「素部装2.0戦略」が打ち出された3。この対策では日本だけでなく中国を含むグローバルサプライチェーンに焦点を当てた。2021年5月には素部装2.0戦略の半導体版ともいえる「K-半導体戦略」が発表された。これは国内での半導体産業の産業集積とエコシステム構築を狙い、ひいては半導体製造の国内回帰を狙うものである。半導体企業による巨額投資(累計510兆ウォン)をもくろみ、そのための投資減税措置も準備した。また、2022年2月にはRCEP(地域的な包括的経済連携協定)の日韓協定部分が発効した。これは初の日韓間の自由貿易枠組みであり、相互間の調達強化の道筋が用意された。

尹政権の経済安全保障政策

上で見たような文在寅政権のサプライチェーン対策は専ら競争力向上や国産化を目指したものであった。経済安全保障的な発想は総じて乏しく、K-半導体戦略に萌芽的なものが見られただけであった。また、サプライチェーン対策としても十全に機能したとは言えなかった。対日輸入の多い中間財品目を国産代替することに重きが置かれ、中国など他の国に起因するサプライチェーン・リスクにはうまく対応していなかった。ワイヤハーネス欠品や尿素水大乱に際してこれら対策は無力であった。

これに対し、2022年5月に発足した尹錫悦政権は経済安全保障を国家安全保障戦略の中で明確に位置付けた。2023年6月に発表された「尹錫悦政府の国家安保戦略4」はグローバル経済安全保障体制の確立を掲げた。そのための方策として、同盟・友邦国間およびインド太平洋経済枠組み（IPEF）などの広域・国際枠組みにおいて経済安全保障を念頭に置いた外交を展開することを挙げたほか、経済安全保障対策の2つの柱を明示した。それは、半導体など需要物資のサプライチェーン強靭化と重要・新興技術の保護・育成である。

尹錫悦政権の経済安全保障対策---2つの柱

尹錫悦政権の経済安全保障対策の第1の柱であるサプライチェーン強靭化5に関しては、今までの間に数多くの取り組みがなされている。

2022年10月の「新政府の素材・部品・装備産業政策方向」では、文在寅政権下でのサプライチェーン対策にある弱点の補強が強調された。日本以外の国との間でのサプライチェーンの脆弱性への対応や尿素などの汎用品・重要鉱物資源の確保などが挙げられた。これを受けて2023年2月には半導体や車載電池などの重要先端産業向けのリチウムやニッケルなどの確保を狙った「重要鉱物確保戦略」が発表された。

2023年4月には「素材・部品・装備グローバル化戦略」が発表され、素部装対策を先端技術戦略として活用することを印象付けた。同年8月にはワシントンでの日米韓首脳会談で日米韓サプライチェーン協力早期警戒システム（EWS）の試行について首脳らが合意した。

これらのサプライチェーン戦略推進の裏付けとなる法令整備も急がれた。いわゆる「サプライチェーン3法6」と呼ばれる一連の法律で、2023年から24年にかけて相次いで成立した。重要物資の指定及び確保、供給混乱時の司令塔設置、供給安定のための政府による物資市場への介入などを定めている。

経済安全保障と関連したサプライチェーン強靭化の取り組みは現在も進められている。2024年2月には韓国も加入しているIPEFサプライチェーン協定が発効し、4月3日に開催された第13回素部装競争力委員会では宇宙航空、防衛産業、水素など10大分野200技術が核心戦略技術に指定された。

第2の柱の重要・新興技術の保護・育成7については、成長動力的側面とともに経済安全保障的側面も強調されるようになっている。経済安全保障の観点から重要な物資、とくに高度な先端技術を要するものについては、その技術を自国で保有し、当該物資を国内生産で賄うことによりサプライチェーン・リスクから自由になろうとする考え方が台頭している。

2022年8月には国家先端戦略産業法が施行された。先端戦略産業の経済安全保障的側面を重視し、経済安全保障の上で重要な「国家先端戦略技術」を列挙して支援・保護態勢の根拠を整備した。2022年12月の「新成長4.0戦略」では、重要・戦略物資における技術上の「超格差」の確保により国際技術競争を超越した優位に立とうとのビジョンが提示された。2023年5月には国家先端戦略産業育成・保護基本計画が発表された。これは、さきの新成長4.0戦略を具体化するもので、未来産業育成の方向性を提示している。具体的な育成・保護分野としては、未来車、ロボット、防衛産業、原子力発電などが列挙されている。

２．経済安全保障への傾斜と日韓経済関係の緊密化 米中対立の激化が日韓経済関係緊密化の契機に

日韓にとって、米中対立により対中ビジネスは米国との関係で新たなリスクをはらむようになった。拡大しづらくなった対中ビジネスに代わる新たな方向性として浮上しているのが米国ブロック内への経済関係の集中、つまりフレンド・ショアリングである。ここに日韓経済関係の緊密化・活性化の新たな意義を見出すことができるのではないか。

経済安全保障の考え方は自由貿易の原則と相いれないものであり、貿易を梃子に発展してきた日韓にとっては元来好ましいからざるものであるのは間違いない。しかし、現状では日韓とも自国の安全保障を米国に依存しており、同盟国をブロック内に囲い込み、自らが唱える経済安全保障に同調させようとする米国の意向に協力するのが日韓としては現実的選択であるともいえる。

尹政権登場に伴う日韓関係改善で日韓経済界に広がる期待感

日韓関係の改善を掲げる尹錫悦政権の登場は日韓間の経済関係を活発化させる要因となろう。

まず韓国側から見ていこう。韓国企業は以前から日韓協力の必要性を認識し、日韓関係改善への期待が強かった。2021年11月の大韓商工会議所の調査によると、日韓経済協力が必要であると答えた企業は92.6％に上る8。尹錫悦政権の発足直前の2022年３月に行われた調査では、日韓関係の改善により対日輸出が27億ドル増加すると推計された9。同年4月の日韓ビジネスへの期待を問う調査10では、「日韓関係改善で貿易投資を増やす」と答えたのは全体の50％に達し、対日取引のある企業に限れば70％に上った。この調査で回答企業は輸出管理などの摩擦解消、ハイレベル外交の再開などの課題を指摘、協力分野としては半導体などのサプライチェーン再編などが挙げられていた。

2023年3月に尹錫悦政権が徴用工判決に対して政府系財団を介した解決策を示したことで日韓関係は大きく改善に向かった。韓国企業が掲げた日韓関係上の課題の多くは一応の解決を見たことで協力拡大の韓国企業の側での与件が整ったことになる。

一方、日本側でも財界を中心に日韓関係改善を求める声が上がっていた。経団連・全経連首脳懇談会や日韓経済人会議など日韓財界の定期会合においては日韓関係改善を通じたビジネスの円滑化を求める要望が採択されてきた。2023年3月の尹政権による徴用工判決対策発表後には韓国ビジネスに従事する企業を中心にビジネス拡大への期待感が広がった11。

経済的競争から共存・共栄へ

日本側には韓国は競争相手であるという意識がいまだ残っている。このせいか、日本の経済界からは日韓経済関係の正常化を求める声が少ない印象を受ける。世界各国での日韓競合が今も続いていることはデータから確認できる。世界の144カ国における2019年と2022年の対日輸入を比較すると12、対日輸入シェアが低下した国で日本が失った輸出は合計1961億ドルに上った。これを各国の対韓輸入シェアの増減によって分類してみると、韓国のシェアが増えた国では1014億ドル、韓国のシェアが減った国では802億ドル、韓国本国で144億ドル、それぞれ日本の輸出が失われた。このように、日本のシェアが韓国に奪われる傾向が見て取れる。

しかし、日韓にはそれぞれ相互間の経済協力進展を指向すべき事情が存在する。まず、日韓とも経済成熟化や輸出の伸び悩みに伴って経済成長率の低迷が顕著になっている。韓国では2023年の成長率が日本を下回る事態となっている。こうした状況下、日韓はこれまで必ずしも十分とは言えなかった互いの市場の活用度を上げてさらなる成長の余地を探ろうとしている。

このことはとくに韓国側にとって切実だろう。強固な産業ピラミッドを持つ日本市場は韓国にとって長らく難攻不落の存在であった。しかし韓国製品の品質は着実に向上しているほか、日本の産業ピラミッドには随所にほころびが見られる。上でも見た通り、韓国企業の日本市場を見る視線には熱いものがある。

また、日本側にとっては毎年200億ドル程度の対韓貿易黒字が貴重な成長源泉となっている。対韓貿易黒字の対GDP比は2000年代に入って0.5％弱で安定的に推移しており、この間の年平均GDP成長率0.67％の約7割を説明する。世界各地で日本製品の競争力は大きく低下しているが、韓国は日本製品、特に素部装関連中間財の長所を理解する良き顧客である。また日韓貿易、特に日本の対韓輸出においては消費財の割合が5.8％（2023年、日本側統計）と他の先進国の例に比べてかなり小さく、さらなる拡大の余地があろう。

上でも触れたように、折からの米中対立の激化に伴って日韓間のフレンド・ショアリングの条件も整えられている。日韓はいまこそ対立から共存・共栄へと舵を切るべき時ではないかと考える。

３．今後に向けて 日韓経済協力の有望分野

日韓経済協力をどのように、どの分野で進めるかについては、これまでの日韓財界の会合での提言13あるいは有識者の提言14などに多く示されているところである。これらを概観し、今後の日韓経済協力における有望分野を挙げるとすれば、以下のとおりである。

第1に、戦略物資として注目されている半導体・ディスプレイを挙げたい。両製品とも最終製品における日本の優位は失われ、代わって韓国が世界的なシェアを占めるようになってから久しい。しかし、製品製造に用いられる素材(シリコンウエハー、画面ガラス、液晶材料など)や製造装置、後処理工程(半導体)などは依然として日本に優位がある。これら素部装関連の対韓投資の促進が期待される。これらの分野では今後進む戦略物資のフレンド・ショアリングの効果も期待される。

第2に、DX（Digital Transformation）,GX (Green Transformation)を挙げたい。DXに関しては韓国ではキャッシュレス化やスマートフォンの活用が進展しており、こうした面で後塵を拝する日本にとっても参考になるところが大きい。地震の少ない韓国にデータセンターを設置する案も一考の価値があろう。GXに関しては、一日の長がある日本の技術を韓国と共有することが考えられる。具体的には、原子炉技術を応用した高温ガス炉(水素・電力の併給)や火力発電所でのアンモニア混焼などに関する技術協力や、原子炉の稼働が困難となった日本に代わって韓国で実証実験を実施するなどのアイデアが考えられる。

第3に、人的交流を挙げたい。2023年3月に日韓財界によって創設が宣言された「未来パートナーシップ基金」は未来を担う若手人材交流の促進を目指している。また、日韓間の民衆レベルでの相互理解増進のため旅行者往来の促進も望まれる。

日韓をめぐる経済統合枠組みの改善

上記のような経済協力のほか、日韓をめぐる経済統合枠組みの導入・改善についても引き続き取り組んでいくことが望まれる。

日韓間の経済統合については過去いくつかの案が提示されてきたが、なかでもSKグループの崔泰源が提唱している日韓共同市場構想15が注目される。崔泰源会長は「日韓の経済規模は大きいが、地政学的分裂と弱化する成長動力の嵐を単独で勝ち抜くことはできない」と述べ、世界経済のブロック化を見据えて日韓を核とする大型経済協力体を構築し、米中欧と渡り合おうとの考えを披歴した。米中欧に比肩する経済共同体を実現させるためには物流、関税、制度、通貨の調和が必要となるなどハードルは高いが、将来に向けての目標としては適切であろう。

このほか、既存の経済統合の枠組みのグレードアップにも引き続き取り組んでいく必要がある。2022年2月に発効したRCEP日韓協定は譲許水準が低く、韓国市場での関税撤廃率が83％、日本市場では92％にとどまる。今後のRCEPをめぐる日韓協議の中でさらなる自由化努力が求められる。環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定（CPTPP）に関しては、2021年12月に韓国が加盟に向けた手続きの開始を宣言し、その後の韓国の経済政策文書でも度々言及されている。しかし、加盟に向けた次のステップとなる加盟申請が出されていない状況である。CPTPPは高度の自由化を標榜し、停滞しているWTOに代わって世界の貿易自由化の先導役として期待されている。韓国はすでに韓米FTAで幅広い市場開放を実現しており、CPTPPが求める高度の自由化に向けた準備はできている。韓国がCPTPPに加盟した場合、日韓間での貿易自由化はさらに進展する。韓国のCPTPP加盟に当たってはこれを日本が積極的に支援することが望まれる。

LINEヤフー問題の教訓

尹錫悦政権による徴用工判決対策の後、日韓関係はかなり修復された。しかし、今も日韓間には様々な問題が生じている

直近の例としては、日韓両国でマスコミを賑わせているLINEの個人情報流出問題を取り上げたい。

2023年10月、LINE利用者の個人情報が最大52万件流出したことが判明し、事態を重く見た総務省は運営会社のLINEヤフーに対して安全管理の徹底を求めて2024年3月と4月の2度にわたって行政指導を行った。これらの行政指導に際し、総務省は親会社である韓国のIT企業・ネイバーとの資本関係見直しを含む経営体制の改善を要求した。

短期間で2度にわたる行政指導、そして民間企業の資本関係にまで言及するという日本政府の異例の対応は、LINEが同様の失態を繰り返したことのほか、国民の大多数が使うSNSサービスであるLINEを経済安全保障上の基幹インフラと見做したことによるものとみられる。

しかし、韓国世論は総務省の指導を日本側による「LINE強奪」と受け取り、反発を強めた。世論に押され、韓国政府も株式売却の圧力があったとして科学技術情報通信省第2次官が5月10日に遺憾の意を表明した。

LINEをめぐる一連の問題は今後の日韓経済協力あるいは投資呼び込みを考えるうえでの重要な論点を提供しているように思う。個人情報保護や経済安全保障の観点からの外国人投資企業への干渉がどの程度まで許されるかについて明確な線引きがなかったこと、日本における個人情報保護や経済安全保障などの考え方の急速な台頭ぶりを韓国世論が理解せず日本側の対応を「大袈裟」と見た節があること、日本の官庁が経済安全保障案件の扱いに慣れておらず安全を見込んだ過剰な対応を取る場合があること、そして自らの措置が相手方にどんな風に受け取られるかについて日本政府の想像力が不足していたことなどが挙げられる。これらの論点における日韓のバイアスを調整するのに必要な対話や相互理解の不足や信頼関係の不在などが問題を大きくしたということであろう。

おわりに

米中対立の激化とともに世界各国で経済安全保障の考え方が台頭してきた。日韓とも経済安全保障対策を急ピッチに進めているところである。同時に世界経済では経済ブロックが事実上復活し、日韓は共に米国ブロックに入る道を選んでいる。日韓は長らく経済的競争関係にあったが、米国ブロック入りにより日韓間のフレンド・ショアリングのメリットが生まれ、日韓協力強化の新たなインセンティブになろうとしている。韓国は日本にとってよき顧客であり、対韓輸出は貴重な成長源泉でもある。韓国にとっても対日市場は最後のフロンティアともいうべき存在である。

日韓経済協力の方向としては半導体、GXなどの産業協力のほか、RCEPのアップグレード、韓国のCPTPP加盟の支援などが挙げられる。日韓共同市場構想については、乗り越えるべき課題はあるものの長期的目標として息の長い取り組みが望まれる。

尹錫悦政権の徴用工判決に対する決断により日韓関係は好転しているが、歴史問題を常に抱えるほか、最近のLINEヤフー問題は対話不足や信頼関係不在が日韓間の反目を強めることを示した。日韓間には大小さまざまな問題がこれからも起こる。ただ、世界の趨勢にキャッチアップしていかねばならない日韓にとって、問題が起こるたびに立ち止まっている暇はない。これからも起こり続ける諸問題を適切に処理するためのパイプ作りが肝要ではないか。

（亜細亜大学アジア研究所教授）

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